大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(う)3678号 判決

〔抄 録〕

一、弁護人の控訴の趣意第一点(理由不備、法令適用の誤)について。

原判決の事実摘示が、「被告人は、(中略)法定の除外事由がないのに、昭和二十七年五月二十二日頃居町大字藪塚百三十七番地農業新井真一方において、同人に対し、同人方から同町大字藪塚千四百六十一番地の「精米業渡辺淳蔵方まで粳玄米七俵の輸送を委託したものである。」となつていて、右輸送の委託にもとずいて現実に輸送された事実を判示していないこと、これに対し、適用法令として食糧管理法第三十一条等の法令を掲げていることは所論のとおりであるが、原判決が適用法令として掲げている食糧管理法施行規則第四十七条は、「主要食糧は左に掲げる場合を除いて、何人もこれを輸送し、又はこれにつき輸送の委託をし、若しくは輸送の委託を受けてはならない。(下略)」と定めていて、現実に主要食糧を輸送するという事実行為の外輸送の委託を為し又は輸送の委託を受けるという事実行為をも禁止しているのであるから、主要食糧の法定の除外事由に該当しない輸送の委託を犯罪事実として摘示するには、原判決摘示のように法定の除外事由がないのに主要食糧の輸送を委託したという事実を判示するをもつて必要にして且つ十分であるものというべく、所論のように、右委託にもとずいて主要食糧が現実に輸送された事実はこれを判示することを要しないものと解せられる。所論は独自の見解であつて採用できない。従つて、原判決には所論の理由不備の違法や法令解釈、適用の誤はなく、論旨は理由がない。

二、同第二点(事実誤認、法令適用の誤)について。

原判決が犯罪事実の項において、所論の輸送の委託の事実(第一点で説明したとおりの事実)を認定し、証拠の項において、被告人の当公廷における供述その他所論の各証拠を挙示していることは、原判決の記載によつて明らかである。そして、右各証拠を綜合すれば、被告人が原判示粳精米七俵を、原判示新井真一から買受けた上、その輸送を委託した事実を認めるに十分である。そして、既に第一点で説明したように、食糧管理法施行規則第四十七条は、法定の除外事由のない主要食糧の輸送、輸送の委託及び輸送の受託という事実行為そのものを禁止している趣旨であると解すべきであるから、それらの事実行為から生ずる私法上の法律効果とは直接関連がないものというべきである。それ故、原判決挙示の各証拠によつて、被告人が法定の除外事由のない輸送の委託をした事が認められる本件においては、その私法上の効果が生じない場合でも、被告人に本件食糧管理法違反罪が成立するものと解するに何らの妨げもないものというべきである。

一般的にいつて、食糧管理法は、国民食糧の確保及び国民経済の安定を図る為主要食糧等の生産加工、配給及び消費の各段階において、必要なる国家的統制を為すことを目的とするものであるから、同法及びその委任にもとずいて発せられた同法施行令、同法施行規則に違反して、主要食糧等同法の統制する物資を売買し、加工し、輸送し、輸送を委託し又は輸送を受託する等の行為は、同法の目的を阻害し、国家の統制を紊す行為として、同法違反罪として処罰せられると共に、私法上無効と解するを相当とする。それ故、被告人が原判示新井真一に法律上有効な輸送の委託を為すことはあり得ないとの所論はこれを首肯するに足るけれども、これをもつて、被告人に罪責がないとの根拠とする所論は失当であるし、本件粳米は、被告人方又はその指示する所に委託した輸送の現実の輸送が完了してはじめて被告人の所有並びに占有に帰し、それまでは、被告人に何ら刑責を生じないとするその他の所論はすべて失当である。原判決には何ら所論の違法の点なく、論旨は理由がない。

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